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心拍数の解釈

心拍数の解釈

生理指標は面白い。言葉でどんなに取り繕っていても発汗値が異常だったりすると、うそをついてる可能性があると推測可能だ。仕事で生理指標として心拍数と発汗を扱うことになり、解釈方法についてまとめてみたい。

 まずは心拍数(HR:Heart Rate)

心拍数とは

緊張・興奮すると同時に、心臓はどきどきすることがある。心配しているとき、心臓がキューっとなると表現することがある。

 

このように、心臓と感情がおおいに関係していることは自覚できるレベルで自明であると推察できる。

 

心臓の拍動スピードを表す心拍は、生理心理学で測定される反応のなかでも古くからよく用いられている。心拍を測定した研究報告は、研究数が急上昇している血圧と併せて、研究報告が多い。

 

心臓のはたらきを観察するにあたって、最もよく用いられる方法は、心臓をはさんだ体表面に電極を設置し、心臓活動を電気的に記録する心電図(electrocardiogram:ECG)である。

 

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上大静脈と右心房の接点にある洞結節(S-A node)とよばれる部位のペースメーカ細胞の自動発火が始まり。このインパルス(電気的な信号)が心房内に広がると、心房筋が収縮し、血液を心室へ送る。

 

心室拡張期に血液は心室に充満しているが、心房収縮によってさらに3割ほど追加される

 

収縮に先行して、脱分極する際に、電流によって生じるのがP波。

 

洞結節で発生したインパルスは心房全体に広がり、約40ミリ秒(ms)で右心房下部の房室結節(A-V node)に集結する。

 

心房の収縮および心室の収縮間には、インパルス伝達の遅延が巧妙に生じ、房室結節を通過するには100msも要する。他方、この際に、血液は心室内に充満することが可能。

 

その後、再び早くなったインパルスは、房室束(ヒス束)を通過し、心室中隔を下降して、心臓の先端に達する。

 

QRS複合(R波)は心室が収縮直前に脱分極する際に発生する電流によるものであり、心室の急激な収縮の開始を反映している。

 

その後、インパルスは電流によるもので、心室側の心筋から順に外側に向かって収縮が起こり、遅れて興奮した外側から内側に向かって冷めていく。

 

このように滑らかに、血液を肺や全身に押し出す。

 

収縮を終えた心筋が再分極するのを反映したのがT波

 

これらのプロセスが1回の心臓鼓動

 

この鼓動の一定時間内の回数を心拍数(Heat Rate:HR)という

 

心拍数は1分間あたりの拍動数bpm(beats per minute)を前提としているが、最近はbpmで対応できないHRの処理法や表記法もあり

 

人のHRは安静時70bpm前後

遅い人で60bpm、早いと90bpm

 

心臓は独立して拍動しておらず、神経系を通じて脳とつながっている。

 

心臓には交感神経と副交感神経(迷走神経)の両方が分布し、上部の心房には、交感神経、副交感神経の両方が分布しているのに対し、株の心室への分布はほとんどが交感神経

 

交感神経は心臓活動を促進し、副交感神経は抑制的に作用する。

しかし、交感神経が働けば、副交感神経が休むといったものではなく、両者とも常にある程度の興奮を持続

 

交感神経は激しい運動などで最大の活動を必要とするとき活発化

 

安静時は、副交感神経である心臓迷走神経が主

 

副交感神経が興奮すると、心臓活動は抑制され、沈静化すると心臓活動は促進される

 

シーソーゲームみたいな感じかな

 

心拍数の解釈例 -研究事例をあげながらー

 

森林映像の心身反応に関する基礎的検証 ー男女比較による検討ー 

目的:森林映像のリラックス効果について、共通性や相違を明らかにすること

方法:前後安静5分、森林映像およびコントロール映像(白黒映像)両方それぞれ視聴 *映像視聴は別日

評価指標:

・主観評価:SD法、VAS、POMS

・生理指標:心拍数(HR)およびHF、LF、LF/HF

HRはリラックス状態を示す指標として用いる

HF成分は副交感神経活動のみを反映するとされており、LFは交感神経活動と副交感神経活動の両方を反映するとされ、交感神経活動の指標にはLF/HFを用いた。

分析:

・心拍変動以外:Maan-Whitny検定

・心拍変動:Friedman検定

結果:

*心拍数のみに触れる

ベースラインに対して、森林映像は10か所、コントロール映像で2か所の低下が認められた。

森林映像では、映像視聴から視聴後にかけて、ベースラインに対し、有意な心拍数の低下が認められ、コントロールでも心拍数低下がみられる。(男女別に分析しており、両方とも低下)

考察:

ベースラインよりも心拍数低下→副交感神経優位になっており、リラックスできていた

同じ映像を見た際→女性の心拍数が上昇→不快だった可能性

 

心拍数の低下→副交感神経優位→リラックス状態

心拍数の上昇→交感神経優位→不快感情

 

視聴覚刺激による情動の変化ー心拍変動の分析ー 

 

背景: 視聴覚刺激を受けて、情動が生じた場合、自律神経反応や呼吸、心拍、筋緊張、発汗など様々な生理的反応が生じるとされているが、中でも自律神経反応は情動の影響をよく現すとされている

従来、自律神経活動において交感神経機能と副交感神経機能が拮抗的に(シーソーのように)働いていると考えられてきたが、反応は単純ではない

 

 

目的:視聴覚刺激による情動誘発の有無と自律神経系に及ぼす影響を明らかにすること

方法:滑稽、不快、恐怖および穏和の4種類のビデオを視聴覚刺激として14名の被験者に提示し、自律神経反応を分析

評価指標:

・生理指標:心拍数(HR)およびHF、LF/HF

 

 

分析:指標ごとに分散分析

*HRはbpm処理、HF・LF/HFはz得点(標準化)

結果:

*心拍数のみに触れる

 

滑稽ビデオ→HR上昇

不快・恐怖・穏和ビデオ→HR減少

有意差なし

 

考察:

滑稽ビデオでは交感神経を活性化、副交感神経機能は抑制

不快・恐怖・穏和ビデオ→交感神経は抑制され、副交感神経を活性化

 

参考文献

 

藤澤清,柿木昇治,山崎勝男(宮田洋監修)(1988)新生理心理学 1巻 生理心理学の基礎.大洋社,京都

 

辻裏佳子,豊田久美子(2013)森林映像の心身反応に関する基礎的検証ー森林映像療法の可能性ー.日本看護技術学会誌,12:23-32

 

村瀬千春,川本利恵子,杉本助男(2004)視聴覚刺激による情動の変化ー心拍変動の分析ー.Journak of UOEH,26:461-471